賃貸経営では経年とともに物件をリフォームする必要が出てきます。
リフォームと聞くと内装のリフォームを思い浮かべる方が多いと思いますが、内装のリフォームと同じくらい外構のリフォームも重要です。
この記事では、なぜ外構のリフォームが重要なのか、リフォームのポイントや日頃気を付けた方が良いことなどをお伝えしていきます。
第一印象は3秒で決まる
なぜ外構のリフォームが重要かというと、入居者が部屋を決めるときに第一印象が大きく影響していると言われているからです。
第一印象は心理学では「初頭効果」と呼ばれており、最初の3秒で得た情報が印象として強く残るとされています。
また、第一印象は視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報が7%と言われており、いかに見た目が重要か分かります。
ホームステージングの事例
第一印象が重要であることを示す事例として「ホームステージング」があります。
「ホームステージング」は部屋を家具や照明で演出することで、入居者に生活イメージを持たせたり、賃貸サイトでの検索時に好印象を与えて入居を促進する手法です。
とある調査ではホームステージングを実施した9割近くの事業者が効果を実感したという結果が出ています。
(一般社団法人日本ホームステージング協会「ホームステージング白書2021」https://www.homestaging.or.jp/file/hswp20220309.pdf)
これは部屋の中を見栄え良くすることで入居を決める事例ですが、外観についても同じことが言えます。
また、外構には宅配ボックスやポストなどの設備品も含まれるので、見た目の向上とともに利便性向上も図れます。
外構をリフォームしないデメリット
では逆に外構をリフォームせずに放置してしまうとどんなことが起こるでしょうか。
賃貸サイトでの印象が悪くなる
外構をリフォームせずに放置しておくと、経年による劣化が目に見えてしまいます。
コンクリートを打った部分が黒ずんできたり、ひび割れや雑草が生えることも。
またポストやフェンスなどもサビが発生したり、場合によっては破損してしまうこともあります。
こんな状態では見た目の印象が悪くなり、選ばれにくい物件になってしまいます。
入居者からのクレームが出る
悪影響が出るのは新規入居者の募集だけではありません。
すでに入居している方からクレームが出る場合もあります。
例えば自転車置き場がない場合は自転車が乱雑に置かれてしまって通行の妨げになってしまったり、ゴミ捨て場にゴミストッカーがない場合は動物による被害で周辺が汚れたりニオイが出てしまったりします。
また、あまり整備されていない物件は管理がされていないとみなされ、空き巣などに狙われやすくなるといった防犯上のリスクもあります。
いずれにしても、こういった物件は家賃を下げないと入居が決まらなくなってしまい、賃貸経営が苦しくなる一方です。
不動産屋の営業マンは、お客様から確実に成約を取るためにいろいろなテクニックを駆使しています。
そのひとつが「当て物件、中物件、決め物件」です。
これは内見をする際の見学順番で、成約に結び付きやすいと言われるパターンのことです。
「当て物件」は入居者ががっかりするような残念な物件。
この後の物件の印象を良くするための当て馬的な物件のことです。
「中物件」はいわゆる“まあまあ”の物件。
入居者の希望にそこそこ合致した普通の物件です。
「決め物件」が営業マンの本命です。
それまでに見た物件がそれほど魅力的ではなかったからこそ、最後に見せるとっておきの物件に決まりやすくなるのです。
賃貸物件のオーナーとしては、この「決め物件」になるように備えておくことが必要になります。
外構リフォームを始める前に
「外観の見た目が大事なのはわかったから早速リフォームに取り掛かろう」と思われたかもしれませんが、その前にぜひ考えていただきたいことがあります。
それは建物を含めてどういった物件にしたいか、ということです。
万人受け=没個性
少し前までは賃貸住宅は「万人受け」を狙ってデザインすることが当たり前でした。
万人受けを狙っていたのは、どんな入居者が入ってくるか分からなかったからです。
ところが、そうした万人受け狙いの賃貸住宅ばかりが増えたため、万人受けする物件は個性のない物件になってしまいました。
コンセプトを決めて他物件と差別化する
賃貸物件が供給過剰となった地域では、ターゲットを絞り込んだコンセプトのある物件の方が入居が決まりやすい傾向にあります。
なぜなら、そのターゲットにとっては唯一無二の物件となるからです。
さらに、コンセプトを持った物件になると家賃以外での訴求力が強くなるため、価格競争に巻き込まれにくくなります。
コンセプト物件をつくる、と聞くと難しそうなイメージを持たれるかもしれませんが、ここでいうコンセプトとは入居者がどういう生活をするのか暮らしのイメージを持たせるということです。
コンセプトの考え方
例えば女性専用の賃貸にしたいとしたら、どうしたら良いでしょうか?
セキュリティがしっかりしていた方が安心なのでオートロックを導入したり、化粧をしていないときでも荷物を受け取れるように宅配ボックスを設置したり、というようなことが考えられます。
同じように、高齢者向けなら、バイク好き向けなら、ファミリー向けなら、とコンセプトを決めることによって、自然とやるべきことが見えてきます。
外構のリフォームもコンセプトに沿った内容で行うことが重要です。
外構のリフォームポイント
やるべきリフォームの方向性が見えてきたところで、それぞれの場所でのリフォームポイントや日頃のメンテナンスについて見ていきましょう。
エントランス
エントランスは建物の顔となる場所です。
一口にエントランスといっても手を付ける箇所はさらに細分化されます。
■オートロック
セキュリティの高さを訴えることが出来るオートロックは入居者に人気の設備です。
古い賃貸住宅ではそもそもエントランスがない場合などがありますが、廊下に扉を新設するなどして対応が可能です。
オートロック設置に伴って郵便ポストの位置を変更しなければいけない場合もありますので、敷地に合った計画が必要です。
■宅配ボックス
新築なら当たり前に付いている宅配ボックス。
設置個数の目安は戸数の30~40%と言われていますが、例えば単身の社会人の入居者が多い場合などはもっと増やしても良いかもしれません。
設置場所が雨の降りかかる場所の場合は宅配ボックスの防雨性能を確認しておきましょう。
■アプローチ
入居者が毎日のように行き来するアプローチは個性を出しやすいポイントです。
コンクリートを打つのか、レンガやデザイン舗装材で演出するのか、建物との調和も考えて計画を行いましょう。
また、植栽を入れることで四季を感じることができたり、照明を配置して帰宅してくる入居者を温かく迎えたりできます。
日頃からキレイに保っておくだけでも大分印象が良くなりますので、定期的に掃除を行いましょう。
駐輪場
スペースを取られる設備ですが、自転車が雑然と置かれているとそれだけで印象が悪くなってしまいます。
立体的に駐輪ができるラックもありますので、スペースをうまく使って計画を行いましょう。
また、オシャレな輪留めもありますので、建物やコンセプトに合わせて選ぶと良いでしょう。
ごみ置き場
ごみ置き場にゴミストッカーがあると、動物除け、見た目の向上、利便性の向上など良い効果がたくさんあります。
ゴミストッカーを採用する際には入居者の利便性はもちろんですが、ごみ収集のしやすさや簡単に手入れができるかなどもチェックポイントです。
どうしてもニオイなどが出てしまうものなので、定期的に水洗いを行いましょう。
まとめ
外構をリフォームすることで物件の第一印象が良くなり、賃貸サイトで選ばれやすくなったり入居者の満足度が高くなったりという効果があります。
また、物件にコンセプトを持たせて差別化することで、ターゲットへの訴求力が高くなり競争力が高くなります。
その際に外構もコンセプトに合わせた計画でリフォームを行えば、無駄なく必要な設備を整えることができます。
建物の設備リフォームが第一優先になるとは思いますが、リフォームを検討する際にはぜひ外構にも目を向けてみてください!