みなさん、神田伯山という人をご存じでしょうか?
最近は毒舌キャラでTV番組にも登場することも多いので「観たことある!」という方も多いかも知れません。
彼の本業は“講談師”。いつも着物姿ですが、落語家ではありません。
そもそも講談とは?江戸時代からある話芸の一つで、当時は“講釈”と呼ばれ、落語よりも古い芸能だと言われています。江戸から明治にかけて、講釈は庶民の娯楽の王様でした。興行が行われる寄席(よせ)は連日満員御礼。講釈は当時の人たちにとって、まさに目の前で繰り広げられる大河ドラマでした。(皆さんご存じの講談社も、当初は講談に関する本を出版している会社だったそうです)
ところが近年では講談専用の寄席もなくなり、講談界自体も下火でした。そんな中、突如現れた異質の講談師が、神田松之丞。(のちに真打に昇進して、6代目神田伯山を襲名します)彼は講談のみならず、ラジオやテレビにも精力的に進出し、独特の毒舌キャラでファンを増やし(同時に敵も増やし…)、世間の注目を集めていきます。
そして、真骨頂はYouTubeで始めた「神田伯山TV」。自分の真打披露興行の舞台裏を余すところなく撮影し、次々とアップしていきます。部外者が入ることが出来なかった寄席の楽屋や講談師、落語家の日常が明かされることになり、元々のファンだけでなく講談を知らない層にも彼の存在が知れわたっていきます。現在のチャンネル登録者数は、なんと18万人!
ここで特筆すべきことは、彼は自分自身の知名度を上げるだけでなく、講談界や寄席、そしてそこで活動する芸人たちの存在感を際立たせることに成功していることです。伝統芸能の世界では、自らの芸を磨くことが何にも増して重要視されます。でも、その芸能分野自体が世間から忘れ去られてしまっては何の意味もありません。彼はSNSや動画などあらゆる手法を駆使して、講談界にスポットライトを当てています。
彼は演者としての技量もさることながら、講談界とそれを取り巻く演芸の世界を鳥瞰的に見つめ、外部の人間をも巧みに巻き込みながら着実に成果を上げていくのです。
まるで、大空を旋回しながら獲物を狙う鳥のように。
皆さんも是非一度彼の講談を聞いてみてください!