コロナ禍によって、自宅で過ごす時間が増えた人たちの間では“断捨離”がブームになっているようです。不要なものを整理して、シンプルな空間で心新たに生活するのは気持ちいいものです。
私たちは様々なモノを簡単に手に入れることができます。戦後間もない物不足の時代には、間違っても“断捨離”が流行語になることはなかったはず。それだけ私たちは物質的に豊かになったということです。
それは住まいに関しても同じ。
週末に昭和8年に建築された古民家のリノベーションを手伝いました。水回りだけでなく、ありとあらゆる部分を直さなければ住むことはできない状態で、完成までは、とてつもなくハードな道のりです。でも、家のつくり自体はしっかりしていて、木材や土壁、小さな電気の部材までも長い年月を経て、味わい深い風合いが漂っています。玄関から土間を通って裏庭につながる空間には、どことなくワクワクさせられます。
この民家は建築されてから約90年が経ち“取り壊し”と“リノベーション”の間でシーソーのように揺れ動いていました。取り壊しに大きく傾いていたところを、酔狂な…、いや好奇心溢れる(笑)オーナーの決断で、シーソーが大きくリノベーションに傾いたというわけ。
住まいに限らず、良いもの、愛すべきものは、ちょっとシーソーの支点をずらして、直してあげたいと感じた週末の経験でした。