UNISON

第6回

連載を担当することになった新建新聞社代表の三浦です。
工務店さん向けの住宅専門紙「新建ハウジング」の発行人もしています。住宅×マーケティングについて研究していて、「住宅産業予測」という弊社発行のムック本などでマーケティングについて書いたり、工務店さん向けにレクチャーしたりしています。
今回から「住宅マーケティングの最先端とすぐできる実践術」と題して連載させて頂きます。よろしくお願いします。
今回はマーケティングとは何か、まず基本から共有しましょう。

「誰に」「何を」「いくらで」「どうやって」を明確化する
=生き方を決めること

マーケティングとはなにか

 マーケティングとは、「誰に=理想の顧客」「なにを=理想の家と暮らし」「いくらで=プライス」「どうやって=売り方・つくり方・守り方×強み」を、 「理念」に基づいて、「ポジショニング」(どの市場で競合とどう戦うのか)も考えながら明確化し、実行していくことです。


 たったこれだけです。シンプルですね。でもそう簡単ではありません。
 特に「誰に」「何を」「どうやって」「いくらで」を明確化することは、企業としての「生き方」(あり方)を明確にすることと言っても過言ではないからです。

 また、マーケティング=プロモーションやセールスと混同しがちですが、プロモーションは「どうやって」の一手段にすぎません。マーケティングの方が上位概念です。ここも大事なポイントです。

楽に売れるようにする

 経営学の父とも呼ばれるドラッカー先生(「もしドラ」でおなじみですね)は、「企業の目的は顧客の創造」「そのために企業には2つの基本的な機能=マーケティングとイノベーションが必要だ」といった意のことを述べています。

 顧客の創造。しびれる言葉です。詳しくは回を改めて解説したいと思いますが、ここでは「顧客を創造するにはマーケティングが不可欠」という点を押さえておきましょう。

 ドラッカー先生はさらに「マーケティングは販売(営業)を不要にする」と述べています。これもしびれる言葉です。
 「誰に」「何を」「いくらで」「どうやって」を明確化し、しっかり実行すれば、販売活動は不要になる=正確には押し売りをしなくて済むようになる、営業行為が最小限(クロージングのみとか)で済むようになる。
 なぜならマーケティングとは理想の顧客から熱狂的に求められるものを作り、その売り方を仕組み化して楽に売れるようにすることだからです。
 販売や営業はできればしたくないという人が大半でしょうから(僕もそうです)、マーケティングをしっかり実践した方がいい。
 また、小さな会社は営業スタッフをたくさん置く余裕がないので、マーケティングをしっかりやった方がいい。今後は、営業スタッフよりマーケティング・プロモーションを担う広報スタッフを優先して入れる方がいいかもしれません。

すぐできる実践術


 この連載では毎回、すぐにできるマーケティングの実践術をご紹介していきます。今回は「ペルソナ」の設定について実践してみましょう。

 マーケティングのキモは「誰に=理想の顧客」を明確化することにあります。理想は、具体的な1つの家族にまで絞り込むことです。
 過去のオーナーのなかで最も理想に近い家族(=価値観と理想の家が近く、理想の暮らしを楽しんでくれた家族/気持ち良く仕事ができた家族)です。
 この理想の1家族を「ペルソナ」と呼びます。

 また、新たな客層を狙う場合やマーケティングをやり直す場合=生き方を変える場合は、次の【ペルソナ設定の際に参考にすべき要素】に挙げたような要素を元にペルソナを設定します。

ペルソナ設定の際に参考にすべき要素

●属性:
性別、年齢、職業、年収、居住地、婚姻状態、子供の有無、家族構成、車の有無、など

●価値観:
重視すること、人生観・仕事観、お金に関する考え方、子育ての考え方、社会貢献、など

●ライフスタイル:
家事の仕方、大事な時間、家族としたいこと、趣味、所属するコミュニティ、よく読む雑誌、よく遊びに行く場所、など

 ペルソナを明確にしておくと、「何を」「いくらで」「どうやって」も明確になります。

 ペルソナが住みたい家を考える(=何を)。
 ペルソナが無理なく払える予算から価格を考える(=いくらで)。
 ペルソナが見ているであろう媒体でプロモーションする(どうやって)。

こんなイメージです。

 先に「何を=理想の家」を固めるのが工務店では一般的ですが、マーケティング的には「誰に」を固める方がやりやすいでしょう。

 なお、ペルソナを絞り込み過ぎると、規模を追うことが難しくなります。ペルソナを複数設定し、それぞれに対応する商品を用意して足し算で数を追う、ペルソナ設定と商品を丸めるといった対策を考える必要があります。

 いずれにしても、一度は理念に基づいて「誰に=理想の顧客」「なにを=理想の家と暮らし」「いくらで=プライス」「どうやって=売り方・つくり方・守り方×強み」を明確化しておくことをお勧めします。

三浦祐成(みうらゆうせい)
■ プロフィール
住宅ジャーナリスト
株式会社 新建新聞社
代表取締役社長

「変えよう!ニッポンの家づくり」を理念とした「新建ハウジング」や「リノベーションジャーナル」の発行人。その他に「木の家」「エコ」「工務店経営」にフォーカスした工務店向け専門紙の発行や住宅業界向けの執筆・講演を手掛ける。

主な発行物
  • 住宅産業大予測2017

    工務店を中心とする地域の住宅産業の目線に特化して、押さえておきたい住宅市場/業界/法制度を徹底解説。2017年を読む視点として、社会と業界の変化、3つのメガトレンドをピックアップしています。

  • あたらしい家づくりの教科書

    本当に"よい家"に住もう。生活の舞台としてふさわしい家とは何か?目に見えない「高性能なエコハウス」の良さをどう伝えるか?家づくりの最前線で活躍する9人のエキスパートが紐解きます。

  • リノベーション・ジャーナル

    収入減・増税・地域活性化・空き家対策など、現在の住宅事情に伴い、リノベーションの需要と存在価値は高まる一方です。施工・ビジネス・インテリアなど毎号様々な角度からリノベーションを紹介するマガジン。

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