前回は「セルフブランディング」について紹介しました。
今回はブランディングの先にあること、目指すべきことについて考えていきます。
高い満足が顧客をファンに変える
パッシブデザインの実践でPDCA徹底
ファーストコールを頂ける会社になる
ブランディングの効果・メリットはいくつもあります。
まず、自社のスタイルが認知されていくことで、そのスタイルを好む・必要とされる人から一番に思い出してもらえる・連絡をもらえる、いわゆる「ファーストコールカンパニー」となることができますし、自社がどんなスタイルかを知らなくても、認知度が高ければ「まず候補に入れておこうか」「まず見にいこう・話を聞こうか」と最初の選択肢に入ることができます。
自社のオーナー(OB)はもちろん、そうでない地域の人からも、こうした効果は期待できます。
クチコミや紹介を頂ける
自社のオーナーからは、ロイヤルティ、つまり満足度や帰属意識、「ファンレベル」が高まるほど、リピート発注はもちろんのこと、いいクチコミや紹介が期待できるようになります。
紹介については、最近では自社への直接の紹介は総じて減っているものの、よく聞いてみたらあのお客様はあのオーナーさんから自社のことを聞いてアプローチしてくれた、という間接的紹介は増えているように見えます。
また、紹介まではいかなくても、リアルな場、掲示板・ブログなどのWeb、SNSなどで自社のいいことを言いふらしてくれるオーナーも、数は期待できませんが、存在するはずです。
「アンバサダー」になって頂ける
こうした自発的に紹介・クチコミしてくれる顧客のことを、最近では「アンバサダー」と呼んで大切に扱い、マーケティングの仕組みに組み込もうとする動きも見られます。
代表例がテレビCMでもお馴染みの、ネスカフェが展開する「ネスカフェアンバサダー」です。
アンバサダーは「大使」などと直訳されますが、芸能人や著名人を親善大使やイメージキャラクターに仕立ててマーケティングキャンペーンを行うことが一般的に行われてきました。
一方で、ネスカフェに代表される最近のトレンドは「ファンレベル」の高い顧客を親善大使・イメージキャラクター的に位置付け、自発的に自社のプロモーションに協力頂く仕組みづくりで、その手法は「アンバサダー・マーケティング」などと呼ばれています。
SNSが大きな影響力をもつ現在、「ファンレベル」の高い顧客が心から買って(建てて)良かったと思うものをSNSやリアルなクチコミで自発的に推薦してくれることほど、リアルで信頼できるプロモーションはないでしょう。
このことは新しい概念・仕組みではありませんが、アンバサダーという流行り言葉も利用しながら、うまく仕組み化してみましょう。
パッシブデザインを導入する
ここまで述べてきたブランディングのメリットを享受するには、引き渡しオーナーの満足度を最大化するだけなく、引き渡し後も満足度を維持向上することが不可欠です。
そのために有効なのが「パッシブデザイン」という手法です。
私なりのパッシブデザインの定義ですが、
・きちんとシミュレーションして、きちんと設計、きちんと評価・改善し、
・自然の恵み、地域の気候を最大限生かしながら、
・快適、健康、省エネで居心地がいい建築をつくること
だと理解しています。
シミュレーションを行った上できちんと設計し、室温の実測や光熱費データなど引き渡し後のデータを把握することによって評価改善を行うことで、設計の精度を高め、満足度を維持向上することを目指します。
家づくりではまだまだ行われていない「PDCAサイクル」を回す手法だと言えます。
パッシブデザインはスキルが高まるほど、精度の高い設計を短時間で行うことができるようになり、また太陽や風など自然エネルギーを活用することで設備機器の採用を抑制できコストダウンも実現できるようになります。
また、引き渡し後も評価改善を続け、住まいのポテンシャルを活かすためのチューニングを提案することで、オーナーといい関係が持続され、満足度の高さとあいまってアンバサダーへと育っていくことが期待できます。
すぐできる実践術④ 実測値のプロモーション活用
きれいなイメージを伝えるだけのプロモーションは効かなくなってきていて、現在は「リアルさ」がより重視されてきています。
住宅産業ではこれまで、「顧客の声」の活用によってリアルさを出していましたが、「顧客の声」のリアルさは限定的で、平たく言えば盛れたり、捏造できたりします。
このため、性能を強みにする工務店なら、顧客の声や事例に加え、実際の室温や光熱費をそのまま見せることをお勧めします。リアルで正直なプロモーションとなります。
もちろん結果が悪い、契約時に約束していた結果と違う、ということになると、プロモーションには使えませんし、クレームになりかねません。
なので、パッシブデザインをしっかり行ってきちんと結果を出すことが大事で、逆に「きちんと」とできるという点が競争力になります。
最近では「HEMS(ヘムス)」によって簡単に室温や光熱費がリアルタイムに把握できるようになっていて、そのデータをプロモーションにも活用しやすくなっています。
次回からは、切り口を変えて、より実践的な内容としていきたいと思います。
「変えよう!ニッポンの家づくり」を理念とした「新建ハウジング」や「リノベーションジャーナル」の発行人。その他に「木の家」「エコ」「工務店経営」にフォーカスした工務店向け専門紙の発行や住宅業界向けの執筆・講演を手掛ける。
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