今回からはより具体的に住宅マーケティングの実践手法をお伝えしていきます。
しばらくは「コンテンツマーケティング」と呼ばれる古くて新しい手法について解説します。
ブログでお役立ち情報を発信
売り込まないプロモーションとプロとしてのブランディングを
これまでの住宅業界のプロモーションは、企業の伝えたいことを、チラシや情報誌などのツールを送って一方的に伝えるものでした(「アウトバウンドマーケティング」と呼ばれます)。
これは売り込みに近いもので、売り込めば売り込むほど最近の生活者は引いてしまいます。
このため、生活者にとって有益なコンテンツをプロとして発信し、それを知りたい人が検索によって訪れてくれるようにする「インバウンドマーケティング」と呼ばれる概念が一般的になってきました。
このインバウンド(=向こうからやってきてくれる)のための具体的な手法が「コンテンツマーケティング」です。
コンテンツマーケティングとは
コンテンツマーケティングを一言で言えば、価値あるお役立ち情報を主にWeb、さらに言えばブログで発信することです。
書いたコンテンツが検索で引っかかり、その情報を求めている人が向こうからやってきてくれることを目指します。
ブログは工務店を始めとする中小企業の情報発信手法として一般化して久しいですが、検索至上経済とも言える現在再び注目を集めている古くて新しい手法です。
もちろんHP(ホームページ)での情報発信も大事で、そのアクセスを増やすためのSEO対策やWebなどの手法もたくさん登場しています。
ですが、HPにコンテンツを随時追加していくのは大変ですし、工務店HPの場合はテキスト(文字)情報よりも写真や図面など画像データの掲載が中心で、この場合検索対策としては弱くなります(テキストが多い方が一般的な検索には引っかかりやすいとされます)。
自分たちで簡単に更新でき、テキスト中心で構成できるブログの方がコンテンツマーケティングに向いています。
コンテンツマーケティングのメリット①
ブログを使ったコンテンツマーケティングのメリットは、プロとしてのキャラ立ち、さらに言えばブランディングができることです。
有益なコンテンツを発信すればするほど、またそのコンテンツに独自性と納得性があるほど、それを読みに来る人は増え、共感する人・プロとして認知してくれる人も増えていきます。
立ち位置が先生やお医者さん的になっていけば、その後の提案や受注も楽になっていきます。
コンテンツマーケティングのメリット②
家づくりの情報収集段階=潜在客段階から接点を持ち、見込み客へと育成できる可能性があることもメリットです。
通常、生活者は家づくりの1〜2年ほど前から情報収集を始めます。
この段階では具体的な依頼先は絞らず、家づくりのお役立ち情報、例えば失敗しない依頼先の選び方、家づくりの費用・ローンのポイント、地震対策の基本などよくわからないこと・不安なことを中心にWebで検索します。
その際に自分の知りたいことに合致する情報があればクリックして読むでしょう。
それを狙うのがコンテンツマーケティングです。
また「ひよこ」効果=刷り込み効果も期待できます。
卵からかえったひよこは最初に見たモノを親だと思い込むと言いますが、情報収集段階でこのブログ=この書き手は信頼できると感じてもらえれば、見込み客へと育成しやすくなります。
逆に家づくりの検討期=依頼先を探している顕在客段階から候補先に入ることは簡単ではありません。
住宅産業においては、できるだけ早い段階、理想を言えば潜在客段階からイメージシェアを高めて生活者の心に留まることを目指し、顕在客となった段階で検討候補に自然と入っている状態とすることがセオリーになりつつあります。
すぐできる実践術⑤キャラとコンテンツを考える
コンテンツマーケティングの実践ポイントは次回解説しますが、すぐできることとして、もしブログを書くなら(書いている方は、リニューアルするなら)、自分は何のプロフェッショナルとしてどんな情報をどのように発信するかを考えてみましょう。
もちろん家づくり・リフォームの専門家であることには違いないのですが、もう少し自社・自身の強みと連動させてキャラ立ちを目指します。
その点で言えば、家+庭の専門家というキャラは魅力的で、まだ空きが多いポジションです。
自然やアウトドアが好きな人であれば、そんなネタも盛り込みながら家と庭の話を書いていけば、アウトドアが好きで自然と一体化できる家+庭に関心のある層が検索を通じて集まってくることが期待できます。
「変えよう!ニッポンの家づくり」を理念とした「新建ハウジング」や「リノベーションジャーナル」の発行人。その他に「木の家」「エコ」「工務店経営」にフォーカスした工務店向け専門紙の発行や住宅業界向けの執筆・講演を手掛ける。
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