UNISON

第6回

前回から「コンテンツマーケティング」と呼ばれる、事業者がプロフェッショナルとして、生活者が知りたい・知っておくべきお役立ち情報を、ブログを中心とするWebで提供する手法について解説しています。
今回はその具体的手法を考えます。

お役立ち情報をどのように誰が伝えるか
「フレーミング」という「布教活動」を

専用ブログを立ち上げるか

 住宅業界やエクステリア業界においては、基本情報はHP(ホームページ)で発信し、最新情報や施工事例はブログやSNSで発信するというWeb活用スタイルが定着しています。
 このスタイルは基本的に変える必要はありませんが、いくつか検討すべき点はあります。

 異業種のコンテンツマーケティングでは、お役立ち情報の発信に徹した専用ブログを立ち上げ、そこのリンクで自社サイトへ誘導する、という手法が一般的です。
 これに対して住宅・エクステリア業界では、社長ブログやスタッフブログの中でお役立ち情報を発信するケースが一般的で、専用ブログの活用は事例紹介など一部にとどまっています。

 ここでいう専用ブログとは、「歯医者が教える歯のブログ」といったような、内容を絞ってお役立ち情報を提供するブログです。
 この場合コンテンツ(記事)は、「最新の電動歯ブラシ購入時の5つのチェックポイントとおすすめランキング」「大人の矯正歯科の選び方4つのポイントと矯正歯科で聞いておくべきこと」「差し歯を徹底比較!保険のプラスチックとセラミックの10年後の変化」といったような、歯に悩みを抱える人が検索して読みたくなる内容に特化します(このブログは実際に存在するので検索してみてください。イメージがつかめると思います)。

 社長ブログやスタッフブログでお役立ち情報を発信しても、検索で引っかかるようにはなりますし、プロとしてのブランディングも可能ですが、どこに行って何をしたといった日記的情報の中にお役立ち情報が埋もれてしまうので、効果は半減してしまいます。
 また、検索対策的にも、専用ブログを独自ドメインで立ち上げる方が効果が上がります。

 本気でコンテンツマーケティングを行うのなら、お役立ち情報に特化したブログサイトを立ち上げることをお勧めします。
 そこまで本格的には、ということであれば、社長・スタッフブログでお役立ち情報の比率を8、日記的内容を2ぐらいに高め、日記的内容で人となりや活動状況を知ってもらう、という手法もお勧めです。
 HP内に簡単に更新可能なお役立ち情報コーナーを設けるのも一手です。

誰がブログを書くか

 お役立ち記事を書いて定期的に載せるのは大変です。
 異業種では、他のサイトをコピー&ペースト(=コピペ)したり、Web上のお仕事発注サイトで1記事500円程度で記事作成を依頼するケースも見られます。
 コピペについては、大手ネット事業者が運営するWebメディアでコピペが発覚、サイトが閉鎖されたことからもわかるように、基本的にバレますし、いち企業ブログでも後々問題となる可能性があるので、丸パクリのコピペはやめましょう。
 自分たちで書くか、ライターにインタビューしてもらったり元ネタを渡して書いてもらうのが基本です。

 ただ、ライターはお金がかかるうえ、建築やエクステリアのプロではないので、言いたいことがボケたり言葉遣いが適切ではなかったりして修正に手間がかかることも少なくありません。
 理想は自身で書くか、パート・アルバイトでもいいので社内に広報スタッフを置いて書いてもらうかです。

 逆に言えば、社長やスタッフが本気でお役立ち情報を書くと、視点がマニアックすぎたり、専門用語を多用したりして、生活者からわかりにくく読みにくい内容となってしまいがちです。
 それをカバーする上でも広報スタッフを置く、それも女性にお願いするのはお勧めですし、広報スタッフの存在は会社をいい方向に変えていきます(この連載でもその効果を解説したいと思います)。

すぐできる実践術⑥「フレーミング」を活用する


 コンテンツマーケティングのポイントは、お役立ちに徹する、生活者が知りたいことを書くということですが、最終的に自社のビジネスに繋がらないのなら意味がありません。
 ビジネスということで言えば、ブランディングに生かす、自社サイトへ誘導するといったこれまで述べてきたメリット以外に大事なポイントがあります。
 それは「フレーミング」です。

 フレーミングとは、ものの見方=視点を伝える・教えることで、価値観や行動を特定の方向に誘導することを言います。

 生活者の多くは、明確な家づくりの価値観や理想を持たないまま家づくりをスタートします。
 何がいい家かがわかっていませんし、いい家にするためにどんな設計や技術、建材設備が必要なのかはわかっていません。
 わかっていない段階でいくら自社の特徴をアピールしても響きませんし、また自社の価値観とかけ離れた価値観を持つ人を顧客にするのは大変ですし、してしまっても大変です。

 まだ家づくりを始める前・始めたばかりで情報収集中の「潜在客」に、いい家とは何かを伝え、それに共感する人を増やすこと
 それもコンテンツマーケティングの目的の一つです。

 そしてそんな人ばかりが自社に来てくれるようになれば、その後の提案・クロージングは格段に楽に、そして楽しくなります。
 つまり潜在客を見込み客に育てる段階でフィルターをかける「フィルタリング」もコンテンツマーケティングの目的です。

 このフレーミングという、言うなれば「布教活動」的手法は、コンテンツマーケティングに限らず重要です。
 布教すればするほど、それを信じる人が増え、集まってくる。
 コンテンツマーケティングはそれをWebで効果的に行おうということですが、それ以外でも実践できるので、考えてみてください。

三浦祐成(みうらゆうせい)
■ プロフィール
住宅ジャーナリスト
株式会社 新建新聞社
代表取締役社長

「変えよう!ニッポンの家づくり」を理念とした「新建ハウジング」や「リノベーションジャーナル」の発行人。その他に「木の家」「エコ」「工務店経営」にフォーカスした工務店向け専門紙の発行や住宅業界向けの執筆・講演を手掛ける。

主な発行物
  • 住宅産業大予測2017

    工務店を中心とする地域の住宅産業の目線に特化して、押さえておきたい住宅市場/業界/法制度を徹底解説。2017年を読む視点として、社会と業界の変化、3つのメガトレンドをピックアップしています。

  • あたらしい家づくりの教科書

    本当に"よい家"に住もう。生活の舞台としてふさわしい家とは何か?目に見えない「高性能なエコハウス」の良さをどう伝えるか?家づくりの最前線で活躍する9人のエキスパートが紐解きます。

  • リノベーション・ジャーナル

    収入減・増税・地域活性化・空き家対策など、現在の住宅事情に伴い、リノベーションの需要と存在価値は高まる一方です。施工・ビジネス・インテリアなど毎号様々な角度からリノベーションを紹介するマガジン。

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