UNISON

第10回

前回までSNS活用についてざっくり解説しました。
SNS、特にインスタグラムは大きな可能性があり、また細かなノウハウもたくさんあるのですが、そろそろ他のテーマに移りたいと思います。
今回は、ライフスタイル提案とそれに不可欠なコラボレーション戦略について触れてみましょう。

家という箱だけでは生活をイメージしにくい
家具や雑貨、衣食住のトータル提案が有効

ライフスタイル提案って?


 工務店が家具店・雑貨店と組んでインテリア提案をする、エクステリア店・造園家と組んでお庭の提案をすることは珍しくなくなりました。
 また、「ヴィレッジ戦略」などと呼ばれていますが、衣食住のショップを自社の敷地に集め、イベントを積極的に開催して集客を行うモデルハウス手法も一般的になっています。

 これらの手法の目的は、建物以外の売上げを最大化することというよりは、「ライフスタイル」を提案することです。

 ライフスタイル=自分なりの生活のものさしに基づいて衣食住をセレクトしていくこと、と定義できます。
 生活者からすると、自分のライフスタイルに合った家を建てたいと思うのが普通ですし、それが正しい住宅のあり方だと思います。
 ところが、建物だけでライフスタイルを提案することは難しい。
 家というただの箱を見せても、どのようにそこで楽しく豊かに暮らすのか、もっといえばどんな時間を過ごせるのかをイメージしにくいからです。

 逆に言えば、できるだけ生活に近く、生活者がこだわりやすいものである家具や雑貨、グリーンなどを選んでもらい、そこから家づくりを考えていくほうが、実は生活者からするとハードルが低いのかもしれません。
 また、生活の中心は食ですので、食べるものと食べる場所を一緒に提案し、そこから暮らし方を考えてもらうことも有効です。

 事業者目線で言い換えると、家具や雑貨やグリーンとセットで、さらには衣食住までをセットで提案し、考えてもらったほうが、自社の家づくりのものさしに近い人が集まってくれて、相性のいい家づくりのパートナーになれる。
 取材をしていてもそのように見えます。

コラボで成功するか失敗するかの基本

 ただし、工務店さんやエクステリア店さんは家や庭のつくり手であって、家具や雑貨を売るショップ機能を持っていないのが普通です。
 そのなかで現在進んでいるのが、異業種とのコラボレーションです。

 身近な例で言えば、「ものさし」(価値観)が近い地元のライフスタイルショップ(家具や雑貨をはじめとする衣食住のセレクトショップ)と提携し、ヴィレッジ戦略として自社の敷地内にお店を出店してもらう。
 家とそのショップの商品をセットで提案したり、セット売りしやすいパッケージ企画をつくったり、協働でイベントを行ったり。
 こんなコラボレーションが増えています。
 今後は、提携先の世界観やポリシー、コンセプト・デザインを生かした住宅商品・エクステリア商品の開発も活発化しそうです。

 こうしたコラボがうまくいくかは、「ものさし」が近いかどうかです。
 はまればいろいろ相乗効果が出ると思いますし、究極は「顧客名簿」も共有できるでしょう。
 志を同じくし、おもしろいことを一緒に仕掛けていく「同志」へと絆が深まることも期待できます。

 逆に「ものさし」が違うのに「売れそうだから」と近づいても、そもそも上手く組めないでしょうし、コラボ先のテイストと自社のテイスト、特に自社の現場で接客する人の見た目や話す言葉がコラボ先と乖離していると、 逆に顧客・見込み客に不信・不安を与えかねません(「コラボビジネスあるある」です)。

ビッグネームともコラボできる

 下の記事は、先日発表されたニュースリリースです。
 老舗セレクトショップ大手の「ユナイテッドアローズ」がコラボ戦略でマンションリノベーションに参入、と。
 上手くいくかは未知数ですが、面白いと思いました。

 こうしたビッグネームとのコラボの場合、主役は住宅会社ではなく提携先になり、そのブランド力で集客することになります。
 先行事例でわかりやすいのは「無印良品の家」でしょうか。

 住宅事業者とすると自社は脇役にまわってしまうことになりますが、むしろそのほうが好都合という事業者も多いでしょうから、こうしたビッグネームの異業種とのコラボは今後一層増えると思います。
 異業種企業には住宅市場は単価が高く、魅力的に見えているようで、いくつか進行形のお話もお聞きします。
 グリーンの分野でも今後あるかもしれませんね。



ユナイテッドアローズがマンションリノベーションに参入することを知らせるニュースリリース(抜粋)。
全文は以下で読むことができる
http://www.united-arrows.co.jp/news/corp/2017/09/079557.html

すぐできる実践術⑩ 地元のショップをまわってみる


 まだコラボをしていないなら、地元の人気のショップを、ジャンルを問わず、まずまわってみることをお勧めします。
 初歩的な話であれですが、人気店には人気となる理由がありますし、そこにどんなお客さんが集まって、どのようにものを買うのかを見ることも勉強になるはずです。

 そのなかでビビッと来たショップは「ものさし」が近いのかもしれません。
 自社のHPやSNS、ニュースレターなどの自社メディアで紹介させてもらったり、自社のスペースで商品を置かせてもらったり、逆にそのショップに自社のメディアやツールを置かせてもらう、といった小さなつながりからスタートするのがセオリーです。

 一方、全国区のビッグネームと組みたいなら、すでにそうしたコラボを進めているフランチャイズやネットワークを探してみるのもいいでしょう。
 1社と組むとしがらみが生じてお互い難しい地元のショップよりも、逆に全国ブランドのほうがコラボしやすいかもしれません。

三浦祐成(みうらゆうせい)
■ プロフィール
住宅ジャーナリスト
株式会社 新建新聞社
代表取締役社長

「変えよう!ニッポンの家づくり」を理念とした「新建ハウジング」や「リノベーションジャーナル」の発行人。その他に「木の家」「エコ」「工務店経営」にフォーカスした工務店向け専門紙の発行や住宅業界向けの執筆・講演を手掛ける。

主な発行物
  • 住宅産業大予測2017

    工務店を中心とする地域の住宅産業の目線に特化して、押さえておきたい住宅市場/業界/法制度を徹底解説。2017年を読む視点として、社会と業界の変化、3つのメガトレンドをピックアップしています。

  • あたらしい家づくりの教科書

    本当に"よい家"に住もう。生活の舞台としてふさわしい家とは何か?目に見えない「高性能なエコハウス」の良さをどう伝えるか?家づくりの最前線で活躍する9人のエキスパートが紐解きます。

  • リノベーション・ジャーナル

    収入減・増税・地域活性化・空き家対策など、現在の住宅事情に伴い、リノベーションの需要と存在価値は高まる一方です。施工・ビジネス・インテリアなど毎号様々な角度からリノベーションを紹介するマガジン。

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