建築家・伊礼氏より

SDGsに真摯に取り組んだ姿勢が街並みへ寄与しているところが良い。小さな工夫をたくさん積み上げて、町の人たちに前面の空間を解放し、外壁のデザインも外構の一部なのだと再認識させるような彩を街へ与えていて微笑ましい。このような、これみよがしでない、優しいデザインが増えて欲しいなあと素直に思いました。

当初、2021年の春に完成を目指して設計を進めていたところ、突然、市から豪雨時対策の下水工事の為に本敷地の貸し出し要望があり、同地区に歴代住まわれている建築主の理解の基、着工を1年遅らせる決断をしました。そのためにいわゆるウッドショックと重なり、当初の設計スペックとしていた外国産材の集成構造材を、結果的には国産の無垢材としたことで、輸送時におけるCO2削減と国材林業への貢献が出来ました。
又、私たちは建築を生み出すプロセスにおいて、ウッドショックによる資材の高騰を補うためのVE提案や工夫、ペットボトル再生断熱材、雨水タンク、自然通風･採光等の環境デザイン、地域に開いたコミュニティーを生み出す外構デザインなど、経済・環境・社会のバランスを目指したSDGsを意識し、具現化することにチャレンジしました。
このKurotoriテラスが人やまちを元気にして地域に永く愛され続けてゆく施設に育ってくれることを願っています。そして建築主、施工者のカメヤグローバルをはじめ多くのメーカーさんや職人さんの御協力のおかげで本賞を受賞することができました。心より感謝致します。
（髙原浩之・浅井幸子・植村祐希）